相続人の中に、成年被後見人や成年被保佐人、成年被補助人といった人がいる場合、どのように相続手続きを行えばよいのでしょうか。
成年被後見人などは、単独で自ら法律行為を行うことができません。成年被後見人が行った法律行為は原則として無効となります。
相続における法律行為というのは、例えば遺産分割協議や相続放棄といったものが該当します。
しかし相続では、遺産分割協議をはじめ様々な手続きを経る必要があります。
そこで、相続人の中に成年被後見人や被保佐人、被補助人といった人がいる場合には、以下のような方法で相続手続きを進めていくことになります。
相続人の中に成年被後見人などがいる場合
相続人の中に成年被後見人といった人がいる場合には、法律行為を代わりに行う人が必要です。
成年被後見人などに代わって法律行為を行うのは、以下の人になります。
- 成年被後見人・・・成年後見人が成年被後見人に代わり相続手続きを行います。
- 成年被保佐人・・・保佐人の同意を得て相続手続きを行います。
- 成年被補助人・・・補助人の同意を得て相続手続きを行います。
成年後見人が相続手続きを行う場合には登記事項証明書が必要
成年後見人が成年被後見人に代わって相続手続きを行う場合、法務局で『成年被後見人の登記事項証明書』を発行してもらい、各機関への提出が必要です。
成年後見人が手続きを行う際には、その他にも提出書類がある場合があります。相続手続きを行うにあたっては、必ず各機関へ必要書類を確認するようにしましょう。
成年後見人が相続手続きを行う場合の注意点
ただし、成年後見人も相続人のひとりである場合には、成年被後見人に代わって遺産分割協議や相続手続きなどを行うことはできなくなります。
成年後見人も被成年後見人も相続人の場合
例えば、相続人である成年被後見人の母が亡くなり、兄弟姉妹のひとりが成年後見人となっているといったケースなどが該当します。
相続人同士であるということは、利益相反(お互いに利益、不利益を受ける)関係になってしまうのです。
もし成年後見人が成年被後見人の代理で遺産分割協議などを行えることになると、本来は成年被後見人が相続できるはずの遺産を成年後見人がひとり占めしてしまうなど、成年被後見人の利益が害される可能性があります。
ですから、成年後見人も成年被後見人も相続人というケースでは、成年後見人が成年被後見人に代わって相続における法律行為を行うことができませんので注意しましょう。
この場合、家庭裁判所に『特別代理人』の選任申立てを行い、選任された特別代理人が成年被後見人に代わって相続手続きなどを行っていくことになります。