相続手続きの中には、相続放棄や限定承認、相続税の申告など、法律で原則的な期限が定められているものがあります。
これらの相続手続きには、被相続人が亡くなってから3か月、10か月といった期限が設けられています。
では、例えば、亡くなった被相続人が所有者として登記されている不動産を、亡くなって10年経ってから、相続人が不動産の名義変更手続きをすることは可能なのでしょうか。
不動産の相続手続きに期限はありませんが注意する点も
不動産の名義変更に関しては、法律で期限が設けられていないうえに、罰則や変更登記を行うべき義務も課せられていません。
ですから、たとえ相続から10年後でも20年後でも、被相続人名義の不動産の名義変更を行うことは可能です。
実際、不動産の名義変更を行われずに、そのまま何十年も放置されているケースが少なくありませんし、法的にはこれでも一応何の問題もありません。
ただし、不動産の名義変更を怠り、そのままの状態で放置しておくことは、将来の子や孫の世代になってから問題が生じる可能性が高くなります。
権利者が増えれば相続手続きも困難になっていく
不動産の名義変更を行わずにそのまま放置してしまうと、年月が経てば経つほど相続が重なり、子や孫をはじめ甥や姪など、その不動産に関わる権利者がどんどん増えていくことになります。
不動産の名義変更や売却などの処分を行うにあたっては、原則として権利者全員の承諾や必要書類への署名捺印などが必要です。
そのため、将来、いざ名義変更や処分などを行おうとしても、その不動産の権利者が多ければ多いほど、それだけ手間や時間、費用が余計にかかります。
実例としては、被相続人が数十年前に亡くなっていたのに名義変更を行っておらず、その被相続人が所有していた不動産の権利者がすでに数十人になっていた、ということもあります。
さらには、明治や大正時代のご先祖様のまま不動産の名義変更が行われていない、といったケースも少なくありません。
こうなると、すでに権利者が百人近くとなっているようなこともあり、とても手が付けられないような状態となります。これがいわゆる『所有者不明土地』と呼ばれるものになっていきます。
そこまで年月が経過していなかったとしても、10年20年といった歳月を経れば権利者の状況が変わっている可能性も出てきます。
例えば、権利者の誰かが音信不通で連絡がとれない、権利者となっている人と面識がなく、どのように連絡をとればよいのか分からない、などといった問題点が生じてくるのです。
名義変更を長年怠ると後の世代が苦労する可能性が高くなる
つまり、今はとりあえず問題が生じていなくても、子や孫の世代になってから様々な問題が生じる可能性が高くなるということです。
不動産に関わる相続トラブルは非常に厄介ですし、実際にトラブル事例が多いものです。
将来の相続トラブルを避けるためにも、できれば相続に伴って不動産の所有者が決まったら、名義変更はできるだけ早めに行うことをお勧めします。
なお、当事務所では不動産登記の専門家と連携して対応しております。不動産の登記などで疑問点やお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。