例えば被相続人(亡くなった方)に長男、次男、三男と三人の子がいて、長男が被相続人と同居していた、というケースで考えてみましょう。
被相続人は『自分の全財産は同居していた長男にすべて相続させる』という遺言書を残していたとします。
この遺言書の通りに遺産分割(遺産を分けること)を行うとすると、当然のことながら次男、三男は何も相続できないということになってしまいます。
ではこのように遺留分を無視している内容の遺言書でも有効となるのでしょうか。
基本的に遺言者の意思が最優先される
結論からいえば、このように他の相続人の遺留分を無視している内容の遺言書であっても、遺言書の効力は有効なものとなります。
民法で定められている法定相続分よりも、基本的に遺言者の意思が最優先されるからです。
ただし次男と三男については、遺留分減殺請求という権利があります。
ですから次男と三男は、自分の遺留分の範囲で財産を相続する権利があるのです。
つまり遺言書そのものは無効とはなりませんが、一定の相続人には遺留分を請求する権利がある、ということです。
遺留分は権利者が当然に受け取れるわけではない
なお遺留分というのは、ただ黙っていて受け取れるものではありません。
遺留分を受け取る権利がある相続人が、一定の期間内(原則として相続が生じてから1年以内)に遺留分減殺請求を行わなければ、その権利は時効消滅してしまいます。
できれば遺留分に配慮した遺言書を
遺留分を無視した内容の遺言書というのは制度がある以上、どうしても相続人間でトラブルが生じやすいものです。
遺言書があることで、余計に深刻な状況になってしまうということも多々あります。
そうしたトラブルを防止するには、相続欠格や廃除にあたるような事情がない限り、やはり最低限、相続人の遺留分に配慮した内容とするのが無難といえます。


これから遺言書を作成するという方は、このような点にも注意しながら十分に内容を検討してみましょう。
もし遺言書の内容などについて不安な点がある場合には、相続や遺言書に詳しい行政書士などの専門家と相談しながら作成することをお勧めします。
当事務所でも、遺言書についての相談を承っております。ご不明な点などがあれば、お気軽にお問い合わせください。