遺言書というのは、必ず書かなければならないものではありません。
むしろ、遺言書がないケースの相続が大半です。いわゆる終活が一般的に認知されるようになってきたとはいえ、まだまだ遺言書を書いている方は少数派といえます。
遺言書がない場合の被相続人(亡くなった方)の遺産は、被相続人が死亡した時点で、いったん相続人の共有となります。
その後、各相続人が何を、どれくらい相続するのかを話し合って決めることになります(遺産分割協議)。
ここで円満に話し合いができるのであれば問題はありません。
ただし、主に以下のような状況では、遺言書がないとトラブルや問題が生じる可能性があるので注意が必要です。
遺言書がないと相続人が苦労することになる主なケース
遺言書がないと相続でトラブルが生じやすい、あるいは相続人が苦労することになる主なケースというのは、次のような場合です。
- 夫婦の間に子がいない場合
- 配偶者がいない場合
- 再婚で先妻、後妻との両方に子がいる場合
- 子の嫁にも遺産を残したい場合
- 事実婚の夫婦である場合
- 相続人が一人もいない場合
- 相続人に法定相続分とは異なる割合で遺産を残したい場合
- 子に知的障害者がいる場合
例えば、夫婦の間に子がいないケースで相続が生じると、配偶者と被相続人の父母あるいは兄弟姉妹が相続人となります。
被相続人の父母の法定相続分は3分の1、兄弟姉妹の法定相続分は4分の1です。
しかし、兄弟姉妹には遺留分がありません。すでに父母も他界していて、配偶者に財産をすべて残したい場合には、遺言書を書いておけば、全財産を配偶者に相続してもらうことができます。
また、法定相続人以外の人に財産を残したい場合(例えば子の嫁や孫、事実婚の配偶者など)は、遺言書がなければ、これらの人に遺産を残すことができません。
遺言書は誰でも書いておいた方がよいものです
前述のとおり、遺言書を残して亡くなる方というのは、まだまだ少数派です。
しかし、遺言書があれば防ぐことができた相続トラブルというのも多いのです。
また、被相続人が亡くなるまでは関係が良好だった場合であっても、いざ相続となった途端に遺産をめぐる骨肉の争いが生じることも少なくありません。
『うちには大した財産もないから大丈夫』『うちの家族はみんな仲がよいから』と思っていても、いざ相続となると状況が変わってしまうかもしれないのです。
実際、家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルの大半は、相続財産が5,000万円未満という、決して資産家ではない、ごく一般的な家庭で起こっているトラブルです。
遺言書を書くことは義務ではありませんが、遺言書を書いておくことで、こうしたトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。
そういう意味では、遺言書は財産の多少にかかわらず、誰でも書いておいた方がよいといえます。
少しでも自分の財産の行く末にに不安があるのであれば、ぜひ遺言書を作成しておくことをお勧めします。
当事務所でも遺言書に関する相談を承っております。疑問点やお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。