公正証書遺言というのは、遺言者(遺言を残す人)が証人立ち合いのもと、公証役場で公証人に作成してもらう形式の遺言書です。
公正証書というのは公証人が作成する公的文書となります。
非常に証明力、証拠力が高く、遺言書の作成方式としては最も安全で確実といえるものです。
一方の自筆証書遺言というのは自分で全文を自書して、一般的には自分で保管しておく形式の遺言書です。
自分で書いて自分で保管するだけですから、最も気軽で簡単に作成できる形式です。
ではもし遺言者が亡くなり、公正証書遺言と自筆証書遺言の両方が出てきた場合にはどちらが有効な遺言書となるのでしょうか。
どちらも遺言書としての効力は同等~チェックするポイントは?
まず公正証書遺言と自筆証書遺言は作成形式が異なるだけで、遺言書の法的な効力としてはどちらも変わりありません。
相続手続き上では、遺言書の内容に沿って遺産分割(相続人間で遺産を分けること)を行う際に違いはありますが、法的な効力としてはどちらも同等です。
作成されている自筆証書遺言が民法上のルールに沿ってきちんと書かれているものであれば、公正証書遺言との法的効力に差はないということです。
両方出てきた場合はまず『日付』を確認する
もし両方の形式で作成された遺言書が複数出てきた場合に、まずチェックするのは『日付』です。
遺言書には必ず作成した日付を入れなければならない、と民法上で定められています。
そして公正証書遺言と自筆証書遺言の両方が出てきた場合には、この『日付が新しい』方が有効な遺言書となります。
これには作成形式による違いはありません。
先に公正証書遺言で作成されたものがあっても、後の日付で自筆証書遺言が作成されていれば後の日付で書かれている自筆証書遺言が有効なものとなります。
遺言書が複数あるのはトラブルの元になりかねない
法的な決まりとしては新しい日付のものが有効な遺言書とはなります。
しかしその内容がまったく異なるようなものであったりすると、やはり相続人間でのトラブルの元になりかねません。
遺言書の内容を書き直す場合は、以前の内容を撤回することを明記したうえで残す、あるいは自筆証書遺言で作成しているのであれば古い日付のものは破棄してしまうのが無難です。
せっかく遺言書を残しても、それがトラブルの原因になってしまうというのは遺言者の本意ではないはずです。
遺言書を作成する際には、そうした点も十分に注意しておきましょう。
なお当事務所でも遺言書についてのご相談を承っております。疑問点や不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。