エンディングノートとは、自分の人生をどのように締めくくるのかを考え、自分の意思や希望を書き記しておくためのノートなどの総称です。
遺産相続の分割方法などを決め、法的な効力が生じる遺言書とは異なり、エンディングノートの書き方、形式は自由です。
そのため、遺言書のように書式や形式にとらわれることなく、自由な形式で気軽に書くことができるのがメリットです。
近年では終活という言葉が定着しつつあり、書店などでもエンディングノートが市販されていますが、例えば、パソコンやスマートフォンに文書を保存しておくといったことも可能です。
もちろん、パソコンやスマートフォンに文書を保存しておくような場合、自分にもしもの時があった時、家族が内容を確認できるようにしておかなければ意味がありませんので注意が必要です。
エンディングノートの限界について
近年は医療が高度化しているうえ、葬儀の方法なども多様化してきています。
自分がどのような死を迎えたいのか、どのように送られたいのか、といった選択を自らが行いたい人が増えてきているのです。
例えば、余命宣告を受けている場合など、近い将来に死が避けられない状況になったとき、家族は延命措置をするかどうかの選択を迫られます。
そこで、本人がどうしたいのかという意思表示をあらかじめ行っておけば、本人の意思を尊重することもできるでしょう。
本人の希望と家族の思いは相反することもある
しかし、ここで難しいのは、本人に延命措置を行わないなどの希望があったとしても、家族の気持ちとは相反することがあることです。
家族としてはできる限りの延命措置を行い、一分でも一秒でも長く生きていてほしい、という希望があるかもしれません。
本人の希望と家族の思いのどちらを優先するかということに、正解はないのです。
最終的には残された家族が決めることも考慮する
また、葬儀についても、親族のみを中心とした、いわゆる密葬という形にするのか、仕事関係者や友人、知人、近所の方々にも参列してもらうのかという点も決めなければなりません。
そして、葬儀に僧侶を呼ぶのか呼ばないのか、といったことについても、故人や家族の考え方によって異なります。
法律では、死後24時間以内の火葬、埋葬を禁じているのみで、最近では葬儀そのものを行わず、火葬のみで済ませる直葬を希望する人も少なくありません。
お墓についても同様に、遺骨を墓地以外のところに埋葬しない限りは、誰と、どのようなお墓に入るべきなのかといったことは法律で定められていません。
自宅に遺骨を安置しておいてもらいたい、散骨や樹木葬などといったように、一般的なお墓に入ること以外の選択肢を希望する人も増えてきています。
ただ、こうした点についても、実際に葬儀を執り行ったり、埋葬の方法などを最終的に決めるのは残された家族です。
エンディングノートに書き記していたとしても、必ずしも自分の希望通りになるとは限らないということは、よく心に留めておく必要はあるでしょう。
エンディングノートで家族が助かることも多い
いわゆる終末期医療や葬儀の方法というのも大事なことですが、例えば自分が亡くなったことを誰に知らせてほしいのか、などといった点も重要なことです。
近年は核家族化が進み、親と離れて暮らす子は、親の交友関係であったり、実印や預貯金の通帳、保険証書などといった大事なものの保管場所がまったく分からない、ということも少なくありません。
葬儀が終わった後、故人と深い交流のあった人や親類などから、なぜ葬儀に呼んでくれなかったのか、といったことでトラブルになるケースもあります。
また、どの金融機関に口座があるのかだけでなく、通信費や光熱費、新聞などの購読代などを自分の預貯金口座から引き落としにしている場合も多いでしょう。
そこで、自分が亡くなったら、誰に知らせてほしいのか、どのような手続きが必要なのか、重要なものがどこにあるのか、といったことをリストにしてあるだけで、残された家族はとても助かります。
そうした点においては、エンディングノートの役割は非常に大きいとも言えます。
エンディングノートの本当の役割
前述の通り、エンディングノートというのは、自分の希望や死後の手続きなどを書き記していたとしても、必ずしも希望通りにはいかない可能性があったり、逆に残された家族が助かる点の両面があります。
そして重要なのは、エンディングノートの内容というのは法的な効力がないことです。
つまり、家族はエンディングノートの内容通りに事を進める義務はないのです。
自分で生前にしっかり希望を書き記していたとしても、実際にそれを執り行うのは、他でもない残された家族です。
ですから、エンディングノートというのは、いわば『遺言書の下書き』という考え方もできるでしょう。
とはいえ、よほどの無理難題ではない限り、生前に家族との関係をしっかりと築いておけば、本人の希望を最大限尊重してくれる可能性は高いものです。
エンディングノートを書く本当の目的というのは、自分の死を見つめなおすだけでなく、家族や周りの人々との関係も見つめなおす、ということになるでしょう。