もし、結婚した夫が入籍直後に亡くなってしまった、といった事例も考えられなくはありません。
例えば、夫が自分の死期が近いことを悟っていて、それまで面倒をよくみてくれた女性と入籍し、その翌日に亡くなってしまった、といったような場合です。
たった1日の夫婦ということになりますね。
俳優の宇津井健さんが、亡くなる5時間前に内縁関係にあった女性と入籍した、といったことも週刊誌などで話題となりました。
このように、入籍直後に夫が亡くなってしまった場合であっても、配偶者である妻には夫の財産を相続する権利が生じるのでしょうか。
法律婚(戸籍上の婚姻)に期間の長短は関係ない
まず、男女の婚姻が成立している要件としては、当事者同士に婚姻するという意思があり、戸籍法に基づく届出(婚姻届)が提出されていることが前提となります。
ですから、お互いに婚姻の意思があり、婚姻届が提出されていれば婚姻は成立します。
たとえ亡くなる1週間前であろうと前日だろうと、法律上の婚姻が成立していれば配偶者として相続人となります。
つまり、婚姻期間の長短は関係ないということです。
相続をめぐるトラブルが生じる可能性も
ただ、こうしたケースでは相続をめぐってトラブルが生じることも考えられます。
亡くなった夫が初婚であったとしても、もし夫の父母が存命であれば父母も相続人となりますし、もし夫の両親がすでに他界していても、夫の兄弟姉妹も相続人となります。
亡くなる直前に配偶者となった人に、なぜ遺産を相続させなければならないのか、といったトラブルが生じる可能性があることは想像に難くありません。
夫が再婚で前妻との間に子がいるような場合も複雑に
夫が再婚で、前妻との間に子がいるといったケースでは、その子も夫の相続人となります。
このような場合も、やはり婚姻期間があまりにも短いとトラブルが生じやすいといえます。
少し悪い言い方をすれば『財産目当てで入籍したのでは』といった疑念をもたれやすいでしょう。
こればかりは本人同士の意思であり、法律上の婚姻関係にある以上、相続人間で話し合いを行っていくしかありません。
『後妻業』などといった言葉もありますが
先述の通り、婚姻というのは当事者同士に婚姻の意思があり、役所に婚姻届を提出すれば成立します。そして、その婚姻期間の長短にかかわらず配偶者となります。
世の中には、年齢の離れた若い女性が、資産家である年配の男性と結婚するといった、まさに『財産目当て』の『後妻業』などといった言葉もあります。
しかし、たとえ女性側にそうした思惑があったとしても、当事者同士に婚姻の意思がある以上は、法律上何も問題なく婚姻は成立しますし、配偶者として相続権を得ることになります。
これも、もし他の相続人がいればトラブルの原因となる可能性は高いでしょう。
もっとも、これはある意味、亡くなった方の自己責任ということになるのでしょうが。
相続は様々な形で生じてくるもの
もちろん、幸せな新婚生活を送っている中で、配偶者が不慮の事故や突然の病で亡くなってしまった、という不幸な事例も当然あります。
私の経験上でも、新婚間もない夫婦の配偶者が突然亡くなってしまい、若くして配偶者の相続人となってしまった方もいました。
相続というのは、ある日突然に意図せず生じることもありますし、冒頭のように、自分の死期を悟った方があえて入籍をし、配偶者として遺産を残してあげようとすることもあります。
問題点が生じる可能性はともかく、相続というのは年齢などに関係なく様々な形で生じてくるものなのです。