一般的な相続手続きにおいては、被相続人(亡くなった方)の戸籍や相続人となる方の戸籍が必要となります。
例えば、銀行など金融機関の相続手続きをはじめ、不動産の名義変更(相続登記)などでは、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍を添付しなければなりません。
なぜ被相続人の戸籍が必要なのかというと、相続人となる人を戸籍の記載で対外的に証明しなければならないためです。
被相続人の財産状況(多数の金融機関に口座があるなど)によっては、いくつもの相続手続きを行わなければなりません。
では、そのように手続き先が多いような場合、何通も同じ戸籍が必要となるのでしょうか。
一般的な相続手続きで戸籍が必要となるものは?
まず一般的な銀行などの金融機関では、被相続人の口座のある支店が窓口となって戸籍などの必要書類を提出することになります。
ほとんどの金融機関においては、原本を窓口で確認した後にその場でコピーをとり、その原本は手続き時に返却されます。
つまり、金融機関の口座がいくつあったとしても、それぞれ手続きの際に原本は返してもらえますので、取得する戸籍の通数は1通ずつで済むことになります。
ただし、金融機関によって手続き方法などが異なる場合があります。手続きの詳細は事前に確認しておくようにしましょう。
ゆうちょ銀行の場合は少し手続き方法が異なる
ゆうちょ銀行に口座がある場合には、他の銀行などとは少し手続きの方法が異なります。
他の銀行と同様に戸籍を用意することは同じなのですが、ゆうちょ銀行の場合は郵便局の窓口に戸籍を含む必要書類を持参し、そこから相続手続きを行うセンターに原本が送られます。
そのため、その場では戸籍の原本を返してもらえず、センターで戸籍をはじめ相続手続き書面を確認後、郵送で原本が返却されてきます。
原本が返却されてくるのは、不備などがなくてもおおむね二週間程度はかかります。他の金融機関にも口座がある場合には、手続きの順序などを考慮しながら行うのがよいでしょう。
不動産の名義変更(相続登記)の場合
被相続人名義の不動産がある場合には、その不動産を相続する方への名義変更(相続登記)を行うことになりますが、この際にも被相続人の戸籍を添付しなければなりません。
この相続登記においては、登記申請書に原本還付を希望するという記載をしておかないと、戸籍の原本は原則として返ってきません。
もし、相続人ご自身が相続登記の申請手続きを行うといった場合には、事前に法務局で登記相談を予約し、申請書の記載方法や添付書類などを確認するようにしましょう。
なお、相続登記を専門家(司法書士)に依頼する場合は、基本的に原本還付で申請を行ってもらえます。
自筆証書遺言の検認手続きが必要な場合
もし、被相続人が自筆証書遺言を残している場合には、まず家庭裁判所での『検認』という手続きをとり、遺言書の内容を確認したうえで相続手続きを進めることになります。
自筆証書遺言の検認は、相続人または遺言書の保管者が家庭裁判所に申立てを行います。
申立てを行うのは、被相続人が亡くなった時点での住所地を管轄する家庭裁判所です。
そして、検認の手続きにも被相続人の戸籍を添付する必要がありますが、その際には注意しなければならない点があります。
それは家庭裁判所に検認を申立てる際に、戸籍の原本還付の手続きが別途必要となり、その手続きを行わないと原本が返ってこないことです。
原本の返却を希望する場合、別途原本還付の申立書を提出したり、原本還付を希望する上申書といったものを提出する必要があるなど、各家庭裁判所により手続き方法が異なります。
また家庭裁判所では原本のコピーをとってもらえませんので、原本とコピーをあらかじめ用意しておく必要があります。
手続き方法や必要書類などは、事前に電話や窓口などで確認しておくようにしましょう。
相続手続きで必要な戸籍は1、2通で済むことがほとんど
上記のように、相続手続きでは基本的に戸籍を確認後にコピーをとって原本を返却してもらえるため、用意する戸籍は1通か2通程度で済む場合がほとんどです。
どうしても早く相続手続きを終わらせたい、同時進行で早く進めたいといったことでなければ、何通も戸籍を取得する必要はありません。
いずれにしても相続手続きを行う際には、無駄な出費を抑えるためにも、必ず手続き先に必要書類や手続き方法などの確認が必要です。
相続手続きに必要となる戸籍は、人によってはかなりの量になることも少なくありません。
戸籍を取得するための実費(役所に納める手数料)だけで、量が多くなればたとえ各1通ずつであっても金額がかさんできます。
また相続手続きの内容によっては、戸籍が数通必要になるケースもあります(相続税申告が必要な場合など)。
相続手続きでどの戸籍が必要なのかわからない、手続きを行う時間がなかなかとれない、などといった場合には、相続に詳しい行政書士などの専門家に相談してみることをお勧めします。
なお、当事務所でも相続手続きに関する相談を承っておりますので、疑問点や不安なことなどがあれば、お気軽にご相談ください。