近年の『終活ブーム』の影響からか、終活に関する民間資格が数多く出現してきています。
かなり高額な受講料を支払う必要があるものも少なくなく、これは少し悪い言い方をすれば『詐欺まがい』ともいえるかもしれません。
どのような目的で資格を取得するのかは人それぞれでしょうが、終活を勉強するためという目的であれば少し考え直した方がよいかもしれません。
終活に関する書籍は数多く出版されていますし、インターネットなどでも一般的に必要な知識などは簡単に探すことはできます(ただし、正確な情報の取捨選択は必要です)。
はっきり言ってしまうと、わざわざ資格を取得してまで知識を得る必要はないということです。
終活のあり方・考え方というのは人それぞれ違う
確かに自分自身の終活を行っていくにあたっては、ある程度の知識はあった方がよいでしょう。
しかし前述した通り終活に関する知識を得たいのであれば、役に立つかどうかもわからないような資格をわざわざとらなくても、自分自身で勉強することは十分に可能です。
何より終活のあり方や考え方、本当に自分に必要な終活というのは人それぞれ違うといえます。
自分の資産状況や親族との関係性、葬儀やお墓についての希望、空き家となる自分の住まいをどうするかなどといった課題は、一般論に当てはめるだけで最良の答えは出てこないものです。
必要な終活や希望は自分自身でよく考えることが重要
終活というのは、やはり自分自身で考えて実践していくことが重要なことです。
エンディングノートの必要性を感じているのであれば作成する、自分の相続人となる人たちが困らないように準備をしておくなど、自分の考え方をしっかりともって行っていくということです。
そうした中で、もし疑問点や困ったことが出てくればプロである専門家に相談するということも選択肢のひとつとなります。
特に法律や税金、遺言書などといったことに関しては、一般の方が完璧に理解することは困難であることが多いものです。
自分の終活に必要なものは何か、どのような知識や準備が必要なのか、より理想的な終活を行うためにはどの専門家に相談すればよいのか、自分自身でよく熟慮しながら実践していきましょう。
民間資格で『終活ビジネス』はできるの?
民間資格の取得を検討している方の中には、自分自身の終活に役立てたいというよりも、資格を生かして『終活ビジネス』ができないか、といったことを考えている方がいるかもしれません。
これは私の個人的な見解ですが、正直なところ資格だけでビジネスにするのは難しいと思います。
なぜなら終活というのは法律問題であったり相続税といった面も絡んでくることが多いため、民間資格で行うことができることは相当に限定されてしまうからです。
いわゆる法律問題に関する相談を有料で受ければ違法行為
最も注意しなければならないのは、いわゆる『法律問題』に関する相談を報酬を得て受けてしまうようなことがあると、これは弁護士法違反という立派な犯罪行為となることです。
例えば相続問題などで紛争が生じているようなケースが典型的ではあるのですが、ここに首を突っ込んでしまうと、いわゆる『非弁行為』にあたる可能性が高くなります。
『非弁行為』というのは弁護士資格のない人が報酬を得て相談を受けたり、代理人などと名乗って相手方と交渉するなど、弁護士にしか許されていない行為をしてしまうことです。
また終活では相続税といった問題にもよく突き当りますが、これも税務の専門家ではない民間資格者が有料で相談を受けることはできません。
これは私たち専門家の間では『常識』です。
しかし一般の方は知らず知らずのうちに巻き込まれてしまう危険性もあります。
もし確信犯的であるなら論外ですが、特に非弁行為に関しては刑事事件、つまり弁護士法違反で逮捕されるといった事態を招く可能性が高いので注意しましょう。
ブームに流されることなく自分流の終活を
結局のところ終活に関する民間資格というのは、いわば資格を取得させること自体が『終活ビジネス』といえるのかもしれません。
つまり終活ブームに便乗した『資格商法』といったところでしょうかね。
もっともすべての民間資格が終活ビジネスに便乗して創設されたわけではないでしょう。
ただ自分の終活に必要な知識を学ぶ手段は、何も資格取得だけとは限りません。
終活というのは本来『自分らしい最後に向けて』準備をするということです。
ブームに流されることなく『自分流の終活』をしっかりイメージしながら行動していくことが大事なのではないでしょうか。