相続というのは生前にどれだけ家族の仲がよくても、思わぬところから相続ならぬ『争族』になってしまうことが往々にしてあるものです。
これは財産の多い少ないは関係ありません。
遺言書作成の相談などでは、どのような場合に争族になってしまうのかといったことを気にしている方がとても多いです。
ではどのようなケースで相続が争いになりやすいのかを、私の経験上からいくつか挙げてみたいと思います。
争族になりやすい主なケースは?
相続でよく問題になるのは、主に次のようなケースです。
親が離婚して再婚相手との間に子がいる場合
相続では子が第一順位の相続人となります。これは再婚相手との子であっても変わりません。
また再婚した相手も配偶者として相続人となりますので、その人たちと遺産分割協議を行わなければなりません。
特に離婚後、何年、何十年も離婚した親とは会っていない、といった場合は特に要注意です。
他の相続人とも面識がない上に、再婚相手と子からすれば何年も会っていない人に財産を渡さなければならないというのは少なからず抵抗があるものです。
親の介護をしていた相続人がいる場合
例えば親と同居しながら介護もしていたという相続人がいると、平等に財産を分けることに納得しにくい場合があります。
特に介護の期間が長ければ長いほど問題が顕著になりがちです。
親と同居していた相続人がいる場合
親と同居している相続人がいると、親と同居していたことに対する恩恵を得たのではないか、といったことが問題になることがあります。
特に土地建物が親名義となっているような場合、同居していた相続人が相応の家賃を支払っていたのであればともかく、そうしたケースは稀です。
また土地建物が親名義ということになると、その不動産も遺産分割の対象となりますので、相続人間で問題が生じる可能性も出てきます。
相続人それぞれが遠方にいる場合
相続人同士が遠方にいるような場合、直接の話し合いがなかなかできず、遺産分割協議でお互いの考え方の食い違いが生じてくるケースもあります。
遺産分割協議は必ずしも相続人が一堂に会して行う必要はありませんが、コミュニケーション不足によるトラブルというのも少なくありません。
長期の連休やお盆、年末年始などで相続人が実家に集まるようなことがあれば、そこは将来の相続について話し合いを行う絶好の機会となります。
できる限り相続人間での意思疎通、共通認識をあらかじめもっておくことが争族を防ぐことにもつながっていきます。
親よりも先に亡くなった兄弟姉妹がいる
このケースでは親の相続になると兄弟姉妹の子、つまり甥や姪といった人たちが代襲して相続人となります。
遺産分割協議というのは人数が多ければ多いほど合意することが難しくなり、問題が生じる可能性も高くなるものです。
特に普段から甥や姪とほとんど交流がないといったような場合には、やはり問題が生じることも十分に考えられます。
親の生前に財産を贈与してもらった相続人がいる
例えば住宅ローンの頭金などのまとまったお金を親から援助してもらう、といったことは決して珍しいことではありません。これ自体はよく聞く話です。
しかしいざ相続となると、こうした親からの援助をめぐって相続人間でトラブルが生じることもありますので注意が必要です。
相続人の妻(夫)がお金にシビアな人である
相続というのは、あまり良い言い方ではありませんが、相続人にとってはまとまったお金が苦労せずとも手に入るまたとない機会でもあります。
相続人の配偶者は直接の相続人ではありません。本来相続とは無関係な人です。
しかし間接的、あるいは直接的に相続財産について口をはさんでくることで、遺産分割協議がなかなかまとまらない、ということも少なくありません。
相続対策というのは他人事ではありません
上記の例は要因となるほんの一例に過ぎません。
相続というのは財産内容や相続人の状況なども様々ですから、100人いれば100通りのケースがあります。
家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルの約8割は、遺産5千万円以下という『普通の家』で生じている問題です。
つまり誰でも争族に巻き込まれてしまう可能性があるということです。
争族を防ぐカギは遺言書と相続人間のコミュニケーション
もし争族にならないようにしたいのであれば、やはり生前からの相続対策というのが非常に重要となります。
具体的には、自分の思いを込めた遺言書を残しておくといったように、相続人同士ができる限り争わない、争う余地がないような対策を講じておきましょう。
遺言書があるからといっても100パーセント争族にならないとは言えませんが、相続トラブルの可能性はぐっと低くできます。
また将来相続人となる人同士のコミュニケーションというもの大事な要素です。
相続に関する共通した考え方を相続人間で共有しておくことは、争族を防ぐうえで非常に重要となります。
事前の準備は念入りに行っておき、将来の争族リスクをできる限り低くする方策を検討しておきましょう。