今現在、自分がどれだけ元気であっても、将来に不老不死の薬でも出てこない限りは、いずれ家族は相続という場面に否応なく直面することになります。
そこで自分が元気なうちに、将来の相続のことについて家族と話し合っておくことは、とても有意義なことです。
これは決して縁起が悪いとか、不謹慎なことではありません。
相続人としても遺産などについてあらかじめ話し合っておくことで、相続人同士のトラブルを防止できるという効果も期待できます。
相続というのは突然やってくることもある
そしてすべての人が、自分の天寿をまっとうできるとは限りません。
通常の社会生活を営んでいれば不慮の事故や不治の病に襲われることは、誰にでも突然やってくる可能性があるものです。
ですから普段から将来の相続について家族と話し合っておくというのは、残される家族のためにも大切なことなのです。
遺言書を書いておくとより安心
被相続人(亡くなった方)の遺産は、原則として相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で、誰が何をどれくらい相続するのかを決めます。
しかし被相続人が遺言書を残している場合には、基本的にその遺言内容に沿って遺産分割(被相続人の財産を分けること)が行われます。
つまり遺言書があることで相続手続きがとてもスムーズになり、相続人の負担も軽減されることになるのです。
家族と相続について話し合っておくとともに、法的な効力の生じる遺言を併せて作成しておくことで、後に相続トラブルとなる可能性がぐっと抑えられます。
遺言書は何度でも書き直すことができます
しかし家族の状況がずっと安泰とは限りませんし、思わぬ出費などで財産状況が大きく変わる可能性もあります。
ですから遺言書を書いた後で、内容を変更したいと思うことがあるかもしれません。
そのような場合には遺言書を書き直すことも可能です。
遺言書というのは何度でも書き直すことができます。
ですからその時々の状況に応じて内容を見直すこともできるのです。
ただし事前に家族と相続について話し合っていた内容と、遺言書に書かれている内容があまりにも異なっていると、かえって相続人同士のトラブルが生じてしまうことがあります。
そういった意味でも相続という話をタブーにすることなく、家族間でオープンに話し合っておくことは大きな意義があるのです。
相続の話は縁起が悪いものではありません
相続というのは人が亡くなった後の話になります。ですからそうした話をすること自体、縁起が悪い、不謹慎であると感じる方も中にはいるかもしれません。
また遺書と遺言書を混同してしまっている方も少なくありません。
被相続人(亡くなった方)の意思をあらかじめ確認しておくことは、決して縁起の悪い話でも不謹慎な話でもありません。
むしろ生前にそうしたコミュニケーションがうまくできずに、いざ遺産相続という場面でトラブルになる方がよほど不幸なことです。
相続対策や遺言書の作成は、自分が元気なうちに、家族とうまくコミュニケーションをとりながら上手に進めていきましょう。
相続だけではなく人間関係のもつれや悪化という感情は、残念ながら法律で解決することはできません。
年末年始やお盆の時期など親族が集まりやすいタイミングで、ぜひ将来の相続について話し合う機会をつくってみてください。