例えば将来的に離婚することを前提に長年別居していた夫婦の一方が死亡して相続が生じた場合、その配偶者は相続人となるのでしょうか。
つまり離婚届を出していなくても長年別居しているなど、実質上はすでに夫婦関係が破たんしているような場合です。
民法では、被相続人(亡くなった方)と婚姻関係が継続されているのであれば、被相続人の配偶者は相続人となる、と規定しています。
そして配偶者は相続において、常に相続人となることが規定されています。
民法第890条(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
どんなに長年別居していても相続権はあります
結論から言えば、どれだけ長年別居していて夫婦関係が実質上破たんしていたとしても、法律上の夫婦関係(婚姻届を出している夫婦)であれば、配偶者として相続人となります。
たとえ実質的に夫婦関係が破たんしていて、配偶者のどちらかが別の女性(男性)と暮らしているような状況であったとしても、法律上の婚姻関係が継続している限りは相続人となるのです。
相続人間の関係によっては納得できない部分もあるかもしれません。
しかし法律上の婚姻関係が続いている(離婚届を出していない)限りは、相続欠格など特別な事情がない限り、配偶者として相続権が生じてきます。
また逆に婚姻届が受理された法律上の夫婦関係であれば、ちょっと極端かもしれませんが、たとえ1日、数時間で配偶者が死亡してしまっても相続人となります。
事実婚(内縁)関係の場合は相続権はない
ただしここで言う夫婦関係というのは、あくまでも法律上の婚姻関係(婚姻届を出している夫婦の場合)ですから、事実婚(内縁関係)は含まれません。
籍を入れずにどれだけ長年連れ添っていたとしても、事実婚状態のままでは法定相続人にはなれませんので注意が必要です。
離婚手続き中に配偶者が死亡して相続が生じたら?
なお離婚調停中など離婚手続きを進めている状況で夫婦のどちらかが亡くなった、といった場合であっても、正式に離婚が成立(離婚届を提出)していなければ配偶者は相続人となります。
配偶者は常に相続人となりますので離婚が成立していない以上、法定相続分で定められた相続権を得ることになります。