例えば、自分の親が亡くなって年月が経過し、兄弟姉妹などとの遺産分割も無事に終わって、親の遺品を整理していたら遺言書がひょっこり出てきた、といった場合、その遺言書はどうなるでしょうか。
そして、仮に遺言書を見つけた相続人が、今さら遺言の内容でモメたくない、という思いから、その遺言書を隠したり破棄してしまったとします。
では、そうした場合、法律的にどのようなことになるのかを考えてみたいと思います。
遺言書を隠してしまうと相続欠格に該当
まず、民法では、遺言書の存在を知っていたにもかかわらず、それを隠してしまうような行為をすると、相続欠格に該当することになっています。
相続欠格というのは、一定の要件に該当すると、相続人としての地位をはく奪されてしまうことです。
遺言書を隠してしまうというのは、まさにこの要件に該当することになり、相続人としての地位をはく奪されてしまうことになってしまうのです。
さらに社会的な制裁も科される可能性がある
さらに、遺言書の存在を知っていた、あるいは見つけたにもかかわらず、遺言書はないと嘘をついたり隠してしまったりすると、これは刑法に違反する行為、つまり犯罪として罰せられてしまいます。
これは私用文書等毀棄罪という立派な犯罪行為であり、これに違反した者は5年以下の懲役に処すると定められています(刑法第259条)。
つまり、相続人としての地位をはく奪される上に、刑法の懲役刑に処せられてしまう可能性もあるということです。
遺言書が出てきたら相続人同士でまずは話し合う
遺言書がある場合には、原則として遺言書の内容に従って遺産分割を行うことになります。
そして、遺言書というのは法的に有効な形式で作成されているものであれば、何年経ってもその効力を失うことはありません。
ただし、相続人全員が遺言と異なる遺産分割に承諾した場合には、相続人同士で決めた遺産分割で相続することも可能です。
もし、遺品整理などで遺言書が後から出てきた場合には、隠したり破棄してしまったりせず、まずは他の相続人と相談するようにしましょう。
その上で、遺言書の内容で遺産分割をやり直すのか、相続人全員で決めた遺産分割でよいのかを判断していくことになります。
確かに、遺言書の内容によっては、相続人同士のモメ事に発展してしまうかもしれません。
しかし、遺言書というのは、故人が相続人に対しての思いを書き綴った大事なメッセージでもあります。
相続人にとっては面倒なことかもしれませんが、できるだけ故人の意思を尊重してあげる方向で話し合うことをお勧めします。