近年は低金利時代という背景もあり、自宅にいわゆる『タンス貯金』をしている高齢者の方は意外と多いものです。
タンス貯金というのは、存在さえ誰にも知らせなければ金額自体はわかりません。
しかし、高齢者のタンス貯金というのは、詐欺被害にあってしまったり、空き巣による盗難といったリスクがあるため、非常に危険な保管方法である側面もあります。
では、もし相続が生じて相続税の申告をしなければならない場合、このタンス貯金については申告しなくてもバレないものなのでしょうか。
税務署の目はそう簡単にごまかせません
タンス貯金のリスクというのは、詐欺などの犯罪に巻き込まれるだけでなく、相続人間でのトラブルの元となる可能性があることです。
金融機関に預貯金をしているわけではないので、通帳に現金の動きが記載されておらず、相続人の誰かが使い込んでしまったのでは、といった疑念が生じることもあるからです。
特に、被相続人(亡くなった方)がタンス貯金をしていて、相続人のひとりが同居していたようなケースでは、使い込みという疑惑をもたれてしまうかもしれません。
そもそも、タンス貯金がいくらあったのか、といったことが不明である以上は、どうしてもトラブルの原因にもつながってきてしまうのです。
タンス貯金は相続財産に入れなくても大丈夫?
まず、相続税というのは、相続財産の基礎控除額を上回った部分にかかる税金です。
そして、もちろんタンス貯金についても被相続人の相続財産となりますから、相続税の課税対象となります。
ただ、タンス貯金は現金でそのまま所持していますので、相続財産に入れずに申告してもバレないのではないか、と考える方がいるかもしれません。
確かに、タンス貯金の金額は黙っていれば誰にも分かりませんが、税務署の目はそう簡単にごまかすことはできません。
税務署はどのようにタンス貯金の存在を知るのか
金融機関にある預貯金や不動産といったものに関しては、被相続人が亡くなると税務署にも詳しい情報は筒抜けになります。
ただ、たとえ税務署であってもタンス貯金の金額までは把握できません。
しかし、税務署は被相続人の収入状況、相続人の預貯金の動きなども詳しく調査します。
例えば、収入状況に照らし合わせて預貯金額が少ない、などといった不自然な点があれば、税務調査が入ることになります。
つまり、タンス貯金を隠して申告したとしても、まだある程度の財産があるはず、ということは税務署にすぐ見抜かれてしまうのです。
悪質とみなされると重大なペナルティも
税務調査の結果、もしタンス貯金の金額がバレてしまうと、最悪の場合、厳しいペナルティが課せられることになります。
特に悪質なケースとみなされてしまうと、『重加算税』が課せられることにもなりかねません。
重加算税は相続税額の40%加算、そして過去にも同様のケースがあった場合には、さらに10%上乗せされ、1.5倍もの相続税額を納めなければならなくなります。
さらに延滞税なども加算されることになり、相続人には重い負担がのしかかることになります。
タンス貯金を甘くみないこと~相手は税務のプロです
このように、タンス貯金を隠していても、税務署の目は簡単にごまかすことはできません。さらに悪質とみなされれば重加算税といった重いペナルティもあります。
相続財産を隠すといった行為は、相続人にとってデメリットしかありません。しかも相手は数多くの経験と修羅場を見てきた税務のプロ集団です。
数万円、数十万円といった金額であればともかく、数百万円、数千万円という金額になれば、まず税務署の目をごまかすことはできないと思っていた方がいいでしょう。
タンス貯金は防犯上の観点からも危険なことでもあります。くれぐれもご注意を。