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相続手続き

相続財産にご先祖様名義の土地が!~売買はできるの?

よくわかる相続と遺言書のマニュアル 相続手続き

相続などで自分が権利をもつ不動産であったとしても、名義人が何代も前のご先祖様名義のままになっているケースは多々あります。

このような土地は、相続に相続が重なって現在の相続人がはっきり特定できない、いわゆる『所有者不明土地』となってしまっていることが少なくありません。

所有者不明土地は全国で約780万ヘクタールもあるといわれており、その面積は九州の面積を超えるほどです。2040年には北海道の面積に匹敵する規模になるいう予測もされています。

これは東日本大震災の復興の妨げになったことで顕著となり、国や自治体としても様々な対策を打ち出してきているところです。

では、もし自分が『所有者不明土地』の権利者になっていることが判明したら、その土地を売買したりすることはできるのでしょうか。

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なぜこれほど所有者不明者土地が増えてしまったのか

所有者不明土地というのは、不動産登記簿などで所有者がすぐ判明しない、判明したとしても所有者と連絡がとれない、などといった土地です。

このような土地が増えてしまった主な原因は、相続登記を怠っていたことです。

つまり、土地の所有者が亡くなって所有権が相続人に移ったにもかかわらず、相続登記を行わないまま何代も経てしまったというケースがほとんどです。

相続登記は義務でないことが根本の問題?

相続登記は義務ではありません。もし相続登記をしなかったとしても、登記されている名義人のままで納税通知書が届きます。

しかし、この送付先は特定の相続人に変更できるため、未登記でも不都合が生じることがないという実態があります。

ところが、いざ土地を担保にお金を借りたり、土地を売却したいなどといった際に、こうした問題が表面化してくることになります。

相続人はネズミ算式に増えていく

相続登記を怠ったまま何代も相続が重なってくると、相続人はネズミ算式にどんどん増えていきます。

名義人の子や孫はもちろん、ひ孫、場合によっては甥や姪といった人たちも相続人となることがあります。

結果として現在の相続人を特定したり、相続人全員の合意を取りつけることが、年月が経てば経つほど困難になっていくのです。

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所有者不明土地は売ることができる?

相続した所有者不明土地を売りたい場合には、主に次のような手順を踏んでいくことになります。

現在の土地や建物の権利関係を確認する

まず行うことは、現在の土地や建物の権利関係をしっかりと把握することです。

法務局で登記事項証明書を取得し、現在の名義人(所有者)は誰なのか、抵当権や仮登記といった担保権が設定されているのかどうかなどを確認します。

記載されている権利関係によって、相続手続きの方法が異なるためです。

また、隣接している土地との境界を調べるため、公図や地図の取得、境界確定の手続きも行わなければならない場合もあります。

所有者および相続人の調査をする

法務局で取得できる登記事項証明書には、登記されている所有者の氏名や住所が記載されていますが、所有者不明土地の場合、所有者がすでに亡くなっているケースがほとんどです。

登記事項証明書だけでは、亡くなっている所有者の相続人の情報などは確認できません。

この場合、所有者の戸籍や戸籍の附票といったものを取得し、相続人を調査、特定していく必要があります。

名義人が亡くなってから何代も経ていると、かなりの手間や時間を要することになるでしょう。

もし相続に相続が重なっているようなケースでは、この相続人を確定する作業は難航を極めることが多々あります。そのためここで諦めてしまい、手続きを放置してしまうことが多いところです。

そうした場合には、相続に詳しい専門家に依頼することも検討しましょう。

不在者財産管理人の選任申立て

所有者不明不動産を売却する手続きとしては、『不在者財産管理人の選任申立て』という方法があります。

これは、共有している土地や建物を売却したいときに、共有者の所在が不明であるような場合に、土地がある管轄の家庭裁判所に申立てを行って、不在者財産管理人を選任してもらう手続きです。

選任された不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得たうえで所在不明者に代わり、他の共有者などと協力して不動産を売却することができます。

また、共有者がすでに亡くなっていて、相続人の所在が不明といった場合にも同じ手続きをとる必要があります。

相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行うことになりますが、不在者財産管理人が所在不明者に代わって遺産分割協議を行うことになります。

相続財産管理人の選任申立て

ケースによっては、上記の不在者財産管理人のほかに、相続財産管理人の選任申立てが必要となることがあります。

例えば、不動産の所有者に相続が生じていたり、共有者の中に相続が生じていても、法定相続人がいなかったり遺言書がないといった場合には、相続財産管理人の選任申立てを行います。

もし相続人がいても、相続人全員が相続放棄しているような場合にも選任申立てが必要です。

相続財産管理人の職務は、相続財産の管理や相続人の調査、被相続人に債務(借金)があったような場合に、債権者に対しての弁済(借金を返すこと)などを行います。

また、相続人ではないけれども、被相続人の財産形成や維持に特別の貢献をしていた人(特別縁故者)がいる場合、特別縁故者に対しても相続財産である不動産を分与することができます。

共有者の中に相続人も特別縁故者もいないといった場合には、亡くなった被相続人の持分は他の共有者に移ります。

そうした手続きを経て、共有していた不動産を売却することができるようになります。

相続登記は必ず行うことが重要~後の世代に苦労をかけないために

先にも述べた通り、相続登記は義務化されていないことが一因となって、所有者不明土地は相当な面積になってしまっています。

先の東日本大震災をはじめ、日本各地では壊滅的な自然災害も多発しています。国も対策を講じてきていますが、まずは相続が生じて所有者が変わったら、必ず相続登記を行うことが重要です。

所有者不明土地になってしまうと、現在の権利者を特定するだけでも相当な手間や時間、お金もかかることになってしまいます。

所有者不明土地の権利関係が複雑な場合、自ら手続きを行うことはまず困難を極めます。

専門家に依頼するにしても、かなりの手間や時間がかかる分、専門家に支払う報酬額も高額になってしまうでしょう。

相続登記を怠ると、後の世代に大変な苦労をかけることになります。相続手続きはしっかりと行うことが肝心です。