近年はビデオカメラや録音機器もかなり安価で手に入るようになり、手軽に録画や録音を楽しむことができるようになりました。
また携帯電話やスマートフォン、タブレットなどでも手軽に動画を撮ったりすることができるようになっています。
そうした便利な機能を利用して、相続人に対する遺言やメッセージを残したいと考える方がいるかもしれません。
ではこうした録画や録音での遺言というのは、法的に認められるものなのでしょうか。
録画の映像や録音の音声は法的に認められません
結論から言ってしまうと、録画や録音で残した遺言というのは法的には無効なものとなってしまいます。
民法では、自筆証書遺言について次のように定められています。
民法第968条1項(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
つまり、法律ではあくまでも全文を自書した文書のみを有効と定めています。
ですからビデオ録画や録音といった方式で遺言を残したとしても、法的な遺言とは認められないということになります。
それでも録画や録音で自分の意思を残したい場合
前述のように法的に有効な遺言は文書のみであり、ビデオ録画や録音といった方式は遺言として無効となります。
しかしどうしても自分の意思をビデオ録画や録音で残したい、という場合はどうすればいいでしょうか。
もちろんビデオ録画や録音で自分の意思を残すことは自由です。
こうした方法の方が自分の意思を伝えやすいといったことはあるかもしれません。
そこで録画や録音での意思表示を行ったうえで、自分で全文を自書する必要のない公正証書遺言を併せて作成しておくことをお勧めします。
パソコンなどの普及により、普段なかなか自分で文字を書くことがないので大変、という方も多いでしょう。
そうした方にとっては、遺言書を全文自書するというのは想像以上に大変な作業です。
ですから自分で書く必要のない公正証書遺言を活用するのです。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言書のことです。
基本的には公証人に自分の意思を伝え、公証人が遺言書を作成します。ですから、自分で自書する必要はありません。
ただし公正証書遺言の作成には手数料がかかります。
財産や相続人の状況にもよりますが、数万円から、多ければ数十万円の費用が必要となる場合もあります。
しかし公正証書遺言は公証役場に原本が保管されるため、自筆証書遺言とは異なり、紛失などのリスクはありません。
また公証人が作成することで、遺言としての形式的なミスなども防ぐことができますし、証拠力、証明力も高い遺言書となります。
ですから録画や録音といった意思表示とともに、法的に間違いのない遺言書も作成しておくというのが良いでしょう。
公証役場に行く前に十分な準備を
公証役場というのは、法的に問題がなければ本人の意思をそのまま文書にするところです。
そのため基本的に個々の事情や状況を細かく精査することはありません。
こうした点も万全にしておきたければ、やはり事前に相続や遺言書に詳しい文書作成の専門家である行政書士に相談することをお勧めします。
公正証書遺言の作成にはコストがかかりますが、その分メリットも大きいものです。
どうしても録画や録音で自分の意思を残したい、自書することが難しいような場合は、公正証書遺言を併せて作成しておきましょう。