相続税の基礎控除額が引き下げられてから、にわかに不動産投資が注目を集めています。
関連する書籍やインターネットの情報などを目にしたことがある、という方も多いでしょう。
実際に基礎控除額が引き下げられたことで全国平均でも約8%程度、地価の高い都市部では約12%程度が相続税を納める相続とされています。
もっとも逆にいえば9割近くという大多数の方にとっては、相続税を考慮する必要がないともいえるのです。
つまり相続税対策を考慮して不動産投資などを検討する必要がある方は、かなりの少数派ということになります。
そもそもなぜ不動産投資と相続税の節税が結びつくのか
不動産投資については少し難しい理屈や計算などがありますが、そこでなぜ相続税の節税効果があるのかというと不動産の評価方式が大きなカギとなります。
例えば1億円の現金の価値は額面通り1億円の価値・評価です。
ところが1億円の不動産というのは額面通りの1億円で評価されるわけではありません。
様々な要素や手法によって実勢価格よりも課税評価額を大幅に下げることが可能なのです。
要するに現金を不動産に変えることで、課税評価額の差額分の節税ができるという理屈です。
不動産投資はあくまでも『投資・ビジネス』であることを理解すること
不動産投資は相続税対策以外にも広く行われている手法ですが、投資である以上はリスクがあることも十分に理解しておかなければなりません。
そして不動産投資というのはビジネスであるという側面もあります。
例えばよくある賃貸アパート経営といったものに代表される土地活用においては、確かに相続税の節税効果という面ではメリットばかりが強調されています。
しかしデメリットやリスクも多分にあることも十分理解して行うことが重要です。
その点を考慮したうえで管理会社に任せっきりにすることなく、収支をしっかりと自分で把握するといった手間を惜しまずにできるかどうかも大事なことなのです。
相続人は本当に不動産を財産として残してほしい?
収益不動産というのは想像以上に維持管理に手間や費用がかかるものです。
管理会社を入れれば管理費という固定費を支払う必要がありますし、不動産には固定資産税も毎年かかります。
建物の老朽化とともに修繕費などがかさむ、場合によっては建て替えも必要となるでしょう。
さらに家賃収入があれば毎年の確定申告といった面倒な作業も必要です(税理士に依頼すればさらにコストがかかることになります)。
もちろんこういった手間やコストを考慮してもなお、不動産投資など様々な手法で大幅な対策をする必要性が生じるケースはあります。
それは資産が数十億円以上などといった、いわゆる『資産家』と呼ばれる方たちです。
しかし何が何でも相続税を圧縮したい、一切納めたくないがために必要性の薄い相続税対策を検討している、あるいはすでに行ってしまっている『普通の』方も多いのです。
相続人の意向というのも考慮~場合によっては『争族』の要因にも
ここまで簡単ではありましたが、相続税と不動産投資の関係性を少し説明してきました。
では将来この不動産を相続することになる相続人は、どのような意向であるかということを果たしてきちんと把握しているでしょうか。
実はここが一番重要なことかもしれません。
これはあくまで私の個人的な感覚ですが、もし私が相続人であれば多少相続税を支払ったとしても使い勝手のよい現金を相続したい、という気持ちがあります。
もちろん収益不動産の中には立地条件がとてもよく、資産として残しておく価値の高いものがあることも確かです。
ただ残念なことにすべてがそういった優良不動産とは限りません。
そのため不動産ならぬ『負動産』をめぐって相続人間でのトラブルが生じるケースもあります。
不動産投資をするなら仕組みの深い理解と情報収集が不可欠
不動産を本当に価値あるものとして相続してもらいたいのであれば、やはり不動産に関する深い理解と知識を頭に入れ、かつ確度の高い情報収集というものも欠かせません。
『とにかく不動産にすれば節税になるらしい』などといった程度の理解で行うのは論外です。
また不動産や税金の専門家にすべて任せておけば安心、ということも一概にいえません。
なぜなら専門家によって顧客対応や仕事の力量に大きな差があるからです。
結局のところ、不動産投資を行うのであれば自ら理論武装したうえで『投資・ビジネス』という高い意識をもつことが大事なことです。
独りよがりの相続対策に走ることなく、まずは相続人の意向というものも十分に考えておくことも必要でしょう。