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相続手続き

海外預金の相続手続き~時間もお金も手間もかかります

よくわかる相続と遺言書のマニュアル 相続手続き

節税目的であったり、投資であったりなどの理由で、海外の銀行に預金をしている方も少なくありません。

また、商社マンなどで海外を飛び回っていた方は、海外の銀行に口座があるというケースもあるでしょう。

そうした海外預金をもっていた方が亡くなった場合、その口座の資産も相続財産となりますので、預金を引き出すなどの相続手続きを行わなければなりません。

しかし、この海外預金の相続手続きに関しては、日本の金融機関での手続きとは異なり、時間もお金も手間も相当にかかります。

海外預金の相続財産の手続きは、大きく『英米法系』(イギリス・アメリカ・シンガポール・香港など)と、『大陸法系』(スイスをはじめ欧州各国など)で方法が異なってきます。

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英米法系の国の相続手続き

英米法系の国の相続手続きついては、現地の裁判所による検認手続き(プロベート)が必要となります。

つまり、裁判所が関与しなければならないため、現地の代理人(主に弁護士)が相続財産管理人として選任され、相続手続きを行っていきます。

裁判所による相続財産管理人の指名

英米法系の国では、まず裁判所に相続財産管理人を指名してもらう手続きが必要です(通常は現地の弁護士など)。

この相続財産管理人が代表者となって、相続財産の確定、相続税(遺産税)の申告・納付、相続財産の分配などを行います。

相続財産が確定したら、その相続税(遺産税)を申告・納付するのですが、国によって税率や控除額は異なります。

なお、相続財産や相続人の条件などにより、日本国内でも相続税の申告・納付が必要となる場合がありますので、不明な点などがあれば税務の専門家に相談してみましょう。

裁判所による相続財産の分配許可を受ける

申告手続きの受理を受けると、裁判所から相続財産の分割許可がおります。ここまでの手続きを経て、海外預金のある銀行に対し、預金払戻請求書を作成、提出することができるようになります。

裁判所への相続手続き完了報告を行う

相続手続きが完了したことを裁判所に報告します。ここで相続財産管理人の役目は終わります。

手続きが終了するまでの期間や費用など

英米法系の国の相続手続きに関しては、相続財産管理人や裁判所が関与しなければならない形ですから、通常は手続きが完了するまで最短でも1年、長ければ3年ほどかかります。

また、現地の相続財産管理人とのやり取りも、通常は国際相続を行う弁護士などに依頼するため、現地の代理人手数料と日本の代理人(弁護士など)の費用を合算すると、数百万円かかるケースも珍しくありません。

そのため、もし海外預金が少額であるような場合には、相続手続きを行うとかなりの赤字になってしまうため、やむを得ずそのまま手続きを行わない場合もあります。

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大陸法系の国の相続手続き

スイスなど欧州各国の相続手続きに関しては、日本国内での相続手続きと同様に、現地の銀行と直接やり取りを行っていきます。

現地の銀行に相続手続きの連絡をする

まず、現地の銀行に対して相続が生じたことの連絡をします。その際に必要な書類などを確認することになります。

相続手続きに必要な書類を用意する

相続手続きに必要となる書類などを用意しますが、ほとんどが日本国内の銀行で必要となる書類などと同じであるため、すでに手元にある場合が多いかもしれません。

主に必要となるのは、遺産分割協議書、印鑑証明書、戸籍謄本などです。ただし、銀行によって必要書類が異なることがあるため、必ず確認するようにしましょう。

手続き書類の翻訳をする

日本の書類を相手国の言葉に翻訳します。語学に堪能な方は自分で行うこともできますが、翻訳が難しい場合には翻訳家、通訳家といった人に依頼して翻訳してもらってもよいでしょう。

公証役場で書類の認証を受ける

翻訳の内容に間違いがないことの認証を受けるため、公証役場に書類を持ち込み、日本の公証役場で認証を受けた書類であることの証明をしてもらいます。

外務省での認証を受ける

公証役場で認証を受けた書類を外務省に持ち込み、書類の公証が日本のものであることの認証を受けます。

相手国の大使館での証明を受ける

海外預金口座のある国の大使館に行き、書類が本人のものであることの認証を受けます。

ここまでの手続きを行ってはじめて、相手国の銀行に相続手続き書類であることを認めてもらえる準備ができたことになります。

海外預金をしている銀行に払戻請求を行う

海外預金口座のある銀行に対して払戻請求書を作成し、添付書類とともに国際郵便で送付します。

不備などがなければ、通常は1か月から2か月ほどで小切手が返送されてきます。

手順は多いが比較的早く相続手続きは終わる

大陸法系の国の場合、裁判所が関与することがないので、比較的早く相続手続きを済ませることができます。

しかし、現地銀行とのやり取りを行ったり、書類の公証に手間がかかるため、この手続きに関しても国際相続に強い専門家に依頼して行ってもらうのが無難でしょう。

専門家に依頼した場合には、一連の手続きをすべて代行してもらうことができます、

大陸法系の国の相続手続きの場合、費用としては英米法系の国の相続手続きよりは安いですが、それでも30万円から100万円ほどはかかります。

ここでも現地の銀行にどれくらいの金額を預金しているのかを把握したうえで、相続手続きを行うかどうかを決めることになるでしょう。

相続手続きには手間や費用がかかることを認識しておく

もし、節税や投資目的で海外預金を行っている方は、相続時にかなりの手間や時間、費用がかかることをきちんと認識しておきましょう。

ケースによっては現地での相続税(遺産税)や、日本の相続税の申告・納付義務も生じてきますので、その点もよく検討しておくことが大事です。

かつては海外に資産を移すことで課税を回避する、といった方法が横行したことがありましたが、現在では海外の資産に対しても課税逃れはできない仕組みになっています。

海外の銀行に口座をもっている方は、相続手続きに相当な手間や時間、費用がかかることなどを念頭に入れ、対策をきちんと行っておきましょう。