一般的な遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
この中で、自筆証書遺言、秘密証書遺言については、民法の中で、遺言書の保管者や発見者は、その遺言書を家庭裁判所に提出して、検認の手続きを行わなければならない、と規定されています。
つまり、自筆証書遺言または秘密証書遺言に関しては、家庭裁判所の検認を受けるまで開封してはならないことになっているのです。
遺言書の検認とは?
遺言書の検認というのは、遺言書の存在を相続人などの利害関係者に周知し、偽造や変造といったことを防ぐために、家庭裁判所が遺言書の形式、内容などを確認して、その遺言書を確実に保存するために行われる手続きです。
ただし、仮に検認を受けなかったからといっても、その遺言書が無効となるわけではなく、逆に検認を受けたものが法的に有効と認められるわけではありません。
あくまでも、遺言書の存在を保存するための手続きです。
遺言書の検認申立てに必要となるものは?
検認は家庭裁判所(遺言者の最後の住所地の家庭裁判所)に申立てを行いますが、その際は以下のものを提出します。
- 検認申立書および当事者目録(家庭裁判所でもらうか裁判所のホームページからダウンロードも可能です)
- 遺言者(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍および相続人全員の戸籍謄本(相続人の状況によって提出する戸籍が異なりますので要確認)
- 800円分の収入印紙(申立書に添付します)
- 相続人への通知に使用する郵便切手(申立人と相続人の人数分)
- その他家庭裁判所に指示された書類など
上記の書類等を家庭裁判所に提出し、不備などがなければ裁判所から検認を行う日程の連絡が申立人に入ります。
その際に通常は、家庭裁判所から日時の候補をいくつか提示されますので、申立人や相続人の都合がよい日時を選択し、家庭裁判所へ伝えます。
検認の日時が決まると、それまでに申立人および各相続人へ家庭裁判所から正式な通知が郵便で届きます。
検認当日に持参するのは、一般的に以下のものとなります。
- 遺言書
- 検認期日の通知書
- 印鑑(出席する申立人および相続人)
- 150円分の収入印紙
- その他家庭裁判所から指示された書類等
検認は相続人全員が出席する必要がある?
遺言書の検認は、相続人または遺言書の保管者が管轄(遺言者の最後の住所地)の家庭裁判所に申立てを行います。
検認の申立てが受理されると、通常は家庭裁判所からの事前連絡、そして申立人および相続人全員に検認日の通知がなされます。
しかし、必ずしも相続人全員が出席しなければならないわけではありません(ただし、遺言書を保管している申立人は必ず出席)。
相続人の一部のみが出席しても検認は行われます。
検認は申立てを行ってもすぐに行われるわけではなく、申立てを行ってから検認が行われるまで1か月ほど、長ければ2か月ほどかかる場合があります。
検認を受けないと各種相続手続きができません
不動産の名義変更や預貯金の名義変更・払い戻しなどについては、検認を受けた遺言でないと手続きを行うことができません。
ですから実質上、被相続人(亡くなった方)の財産上の手続きが必要であれば、必ず家庭裁判所での検認を受ける必要があります。
また、検認の手続きを経ずに遺言書の内容を執行したり、家庭裁判所以外の場所で封印のある遺言書を開封してしまったりすると、5万円以下の過料(罰金)に処せられる場合がありますので、注意が必要です。
なお、公正証書遺言については、原本が公証役場に保管されており、作成した時点で公的な書面となっていますので、家庭裁判所での検認は不要です。見つけた時点で内容を確認しても差し支えありません。
そのため、公正証書遺言の場合は、被相続人が残した遺言書の内容に従って迅速に相続手続きを行うことができます。
自筆証書遺言や秘密証書遺言については、遺言書を見つけても開封せず、できるだけ早めに家庭裁判所での検認の手続きを行うことをお勧めします。