遺贈というのは、遺言で受遺者(贈与を受ける人)に贈与を行うことです。
遺贈は相続人に対して意思表示をすることもできますし、相続人以外の第三者に対しても行うことができます。
そして、遺言による遺贈には、包括遺贈と特定遺贈とがあります。
包括遺贈は、例えば『全財産を○○に遺贈する』『財産の2分の1を○○に遺贈する』といったように、一定の割合で財産を譲る意思表示を行うものです。
一方、特定遺贈は、特定のもの(不動産や自動車など)を指定して財産を譲る意思表示をするものです。
では、もし受遺者が遺贈を断りたい場合、それは可能なのでしょうか。またどのような手続きが必要なのでしょうか。
遺贈の内容によって放棄の方法や可否は異なる
遺贈を放棄したい場合には、包括遺贈なのか特定遺贈なのかによって、放棄の意思表示および方法などが異なります。
特定遺贈の場合の手続き
特定遺贈の場合には、受遺者が遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることが可能です。
ただし、いつまでも遺贈を放棄するかどうかの意思表示をしないのでは、相続人などの利害関係者は、遺産分割を行うことができずに困ってしまいます。
ですから相続人などの利害関係者は受遺者に対して、遺贈を承認するかどうかの催告をすることができます。
そして、その催告から一定期間内に意思表示がない場合には、受遺者が遺贈を承認したものとみなされます。
包括遺贈の場合の手続き
包括遺贈については、受遺者は相続人と同様の権利義務を有すると民法で規定されています。
つまり、相続人と同じ立場になるということです。
そのため、もし遺贈を放棄したい場合には、相続放棄や限定承認といった手続きと同様の手続きが必要となります。
ですから受遺者は、受遺者となったことを知った日から原則として3か月以内に、家庭裁判所で遺贈の放棄または限定承認の手続きをとらなければなりません。
なお遺贈の承認および放棄は、一度その意思表示をすると撤回することはできませんので、慎重に検討するようにしましょう。
民法第989条1項(遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し)
遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない。
遺贈を受けた財産も原則として相続税の課税対象となります
遺贈された財産については原則として相続税の課税対象となります。
ですから被相続人の財産状況によっては、相続税の申告・納税義務が生じる場合があります。そうした点も含めて遺贈を受けるかどうかを検討する必要も生じてくるでしょう。
また、遺贈された財産が不動産であれば不動産取得税や登録免許税(登記時に納める実費)、所得税、住民税、復興特別所得税などといった税金もかかってきます。
法人に対して遺贈(寄付)する場合
相続税は個人に対して課税される税金であるため、法人が遺贈を受けた場合には受贈者の法人に相続税は課税されません。
ただし遺贈によって受けた経済的利益に対しては、原則として法人税が課税されます。
なお地方公共団体や特定の公益法人などに遺贈寄付した財産については、相続税の課税対象としない特例もあります。
詳細は下記国税庁のホームページを参照してみましょう。