最近では著名人だけでなく、一般の方でも散骨を希望する人が増えてきています。
散骨というのは、例えば生前に海が好きだった人で、故人の希望があったような場合に、海にお骨の一部をまく、などといった葬送のことです。
ただ、故人が散骨を希望していたとしても、実際には希望通りに散骨が行われず、一般的なお墓に埋葬される、というケースが少なくありません。
では、なぜ本人の希望通りにならないことが多いのでしょうか。
遺言書の記載はあくまでも本人の希望に過ぎない
遺言書というのは、相続で財産の分け方などを決めるうえで最優先されるものであり、形式上に問題がなければ法的効力が生じる大事な書面です。
しかし、葬送の方法などについては、たとえ遺言書に散骨の希望を書いていたとしても、その記載に法的な効力があるわけではありません。
遺言書による法的な効力が生じるのは、あくまでも財産の分け方(遺産分割)などといったことに限られます。
つまり、本人がいくら散骨を希望し、遺言書に書いていたとしても、実際に葬送を行う家族など周囲が反対すれば本人の希望は叶わない、ということになります。
散骨を行う相続人の経済的・精神的負担も
故人が散骨を希望しても行われない理由としては、家族の経済的、精神的負担というものも考えられます。
散骨を行うにあたっては一般的な埋葬とは異なり、散骨を行うための手続きや業者を探したり、周囲の反対意見を説得するなどの負担が生じてきます。
そこで、本人はすでに亡くなっているのだから、やはり普通のお墓に埋葬すればいいのではないか、というところに落ち着くのでしょう。
ですから、もし散骨を希望することを遺言に残すのであれば、必ずしも自分の希望通りににはならないということは十分に留意しておかなければなりません。
散骨をしてもらう確実な方法はありませんが
正直なところ、散骨を希望しても100パーセント確実に行ってもらう方法というものは、残念ながらありません。
しかし、できる限り本人の希望に沿った形で、散骨を実現するための準備を行っておくことはできます。
その方法の一つとしては、生前にあらかじめ専門家などと『死後事務委任契約』を結んでおくことです。
死後事務委任契約というのは自分の死後、一定の内容を行ってもらうことを、事前に第三者などと契約しておくことです。
死後事務委任契約は一般的に、相続人のいない人などが、自分の遺産や遺品をどのように処分するのかといったことを第三者に委任するために使われる、といったことが多いものです。
ただし散骨の場合、いくら契約とはいえ、家族や周囲の強い反対の中で、第三者が無理やりにお骨を持ち出して散骨を行う、といったことは現実的に不可能です。
もし散骨を希望するのであれば、生前によく家族と話し合っておき、できる限り家族の負担とならない形で行えるよう、十分に準備を整えておくことが肝心です。