終活というのは、自分が亡くなった後のこと、認知症などで自分の判断能力が失われてしまったときのために行っておく準備などの総称です。
『終活なんて必要ない』という持論をもっている知識人なども多数いるようですが、私は終活をしっかりと行っておくことは、とても重要なことだと思っています。
そこで終活はいつから始めればよいのか、といったことを考えてみたいと思います。
財産状況や家族関係、自分の希望などといったものは人によって異なりますので、一概に『いつから始める』というタイミングを断言するのは難しいものです。
ただ専門家としては、一般的にこれくらいの年齢から始めるのがよいのかな、という一応の目安や考え方というのはあります。
終活を始めるタイミングの目安は?
終活と一口に言っても、実に様々な準備や手続きなどが必要となることも多いでしょう。
ですから、ある程度じっくりと考えて検討できる時間的な余裕があった方がよいといえます。
そうした点を考えると、リタイアしたばかりで気力も体力も十分にある60~65歳くらいから始めるのがベストなタイミングかもしれません。
70代、80代ともなってくると、体力的にも気力的にも無理がきかなくなってくることが多くなりますし、認知症をはじめとする病にかかってしまうリスクも高くなります。
ですから時間をかけて自分でしっかりと準備ができるうちに始める方が、より自分の希望に沿った形で進めることができるといえるでしょう。
例えば、生前に自分の葬儀やお墓といった準備をするにしても、いくつかの業者から見積もりをしてもらったり、内容をじっくりと検討する時間が必要です。
また、必要があれば専門家のアドバイスやサポートを受けながら、より自分に合った形の終活を行っていくことができます。
定年退職は人生の転換点でもある
仕事を定年退職した後というのは、ライフスタイルも大きく変わってきます。
いわば人生の転換点です。
そういった意味でも、自分のこれからの人生や終活といったことを考えるには、とても良いタイミングなのです。
定年退職後であれば、まだまだ自分で考えたり動くことが十分にできます。
もちろん個人差はありますが、70代、80代となってくると、なかなかそうした点が難しくなってきてしまうでしょう。
夫婦間のいいコミュニケーション手段にもなる
終活を考えるうえでは、長年連れ添ってきた配偶者との関係というのも重要です。
世の中には夫が定年退職後に、妻が突然離婚を切り出すといった『熟年離婚』などという問題も見聞きします。
しかし定年退職後に、ただ家でゴロゴロとのんびり過ごすのではなく、自分や家族のことを真剣に考えて終活に取り組んでいれば、そうした問題も起こりにくくなるでしょう。
また例えば定年退職を機に、夫婦で終活のことを話し合ったり、一緒にエンディングノートを書いてみるといったことで、夫婦間のいいコミュニケーション手段にもなります。
終活を万全にしておくと相続も円滑に
これから先、不老不死の薬などが出てこない限りは、いつか必ず自分も死を迎えることになります。また、認知症などで判断能力が失われてしまうかもしれません。
そして人が亡くなれば、必ず相続という問題が待っています。
相続というのはトラブルと隣り合わせであり、最初はほんの少しの感情のすれ違いが、やがて取り返しのつかないトラブルにまで発展してしまう事例も少なくありません。
私は仕事柄、そうした事例を数えきれないほど見て経験してきました。
ただ遺言書の作成をはじめ終活を万全に行っておけば、残された家族がそうした相続トラブルに見舞われることなく、円滑に相続や手続きが済むことにつながります。
私たち専門家としては、ぜひ一人でも多くの方が終活に対して前向きに取り組み、安心して老後を過ごせるようになってくれることを願ってやみません。