自筆証書遺言の場合『全文が自筆で』書かれていなければ、法的に効力が生じる有効な遺言書にはなりません。
つまりパソコンで作成された遺言書というのは無効ということになります(ただし自筆証書遺言の財産目録部分に関しては、パソコンで作成されたものでも有効です)。
その他にも自筆証書遺言については内容によって無効となるケースがいくつかあります。
ではパソコンで作成されているなど法的な不備がある自筆証書遺言を使って、相続手続きというのは行えないのでしょうか。
自筆証書遺言はまず家庭裁判所の検認を受けることが必須
まず結論から言ってしまうと、法的に無効となる自筆遺言書を使って各種の相続手続きを行うことはできません。
自筆証書遺言を使って相続手続きを行うためには、必ず家庭裁判所での検認を受けて『検認済証明書』を添付してもらう必要があります。
さらに封がされている自筆証書遺言の場合、相続人は勝手に開封することはできず、検認の際に家庭裁判所で開封してもらわなければなりません。
ということはパソコンで作成されているといった無効な形式であったとしても、封がされていれば検認を受けるまでわからないということになります。
遺言書の検認は遺言書の有効・無効を判断するためのものではない
そして遺言書の検認というのは、作成されている遺言書の有効・無効を判断するといった手続きではありません。
あくまでも、遺言書の現況を保存するための手続きになります。
そのため、たとえ家庭裁判所の検認済証明書が付されたとしても、遺言書の形式が法的に無効なものであれば、各機関で相続手続きに応じてもらうことはできません。
もしパソコンで作成された遺言書が出てきた場合は?
パソコンで作成された遺言書が出てきてしまった場合には、その遺言書で相続手続きを行うことはできませんので、相続人間で遺産分割協議を行う必要があります。
遺言書の形式が無効である以上、相続人は遺言書の内容に従う義務はありません。
ですから必ずしも遺言書に沿った遺産分割を行う必要はなく、相続人間で誰が何をどれくらい相続するのかを決めることになります。
なおパソコンで作成された遺言書が出てきたら、公正証書遺言を作成するための下書きであるといった可能性も考えられます。
ですから念のために、公正証書遺言が作成されていないかどうかも確認しておきましょう。
遺言書の検認は時間がかかる~遺言書はきちんと作成すること
せっかく自らの意思で遺産の分け方を決めたとしても、肝心の遺言書の形式が無効となってしまっては書かなかったのと同じことです。
また遺言書の検認は家庭裁判所に申立てをしても、すぐに行ってもらえるわけではありません。
通常は申立てから1か月程度、長ければ2か月ほど待たされる場合もあります。
そういった意味でも無効な遺言書を開封するために無駄な時間が生じないよう、遺言書は法的に有効な形式できちんと作成しておくようにしましょう。
自筆証書遺言を作成する際には、遺言書の作成に詳しい行政書士などの専門家と相談しながら作成するのが安心です。
また法的に間違いのない遺言書を確実に残したいのであれば、公正証書遺言での作成をお勧めします。